エピフォンエリーティストから2015年に発売された奥田民生が監修し、自身が所有するビンテージモデルをもとに存在しないユニークな仕様で登場した日本製コロネット。
限定品のためなかなか出回りませんが、中古で購入できましたので紹介します。
ボディ形状
ボディの厚みは約35mm。
バックコンターがないスラブボディ。
ヘッド形状
通常、コウモリの翼のような片側6連ペグのヘッドとなるのですが、主に古いエピフォンのギターにみられる形状のヘッドを採用しています。
NAAM2020以降では60年代スタイルのヘッド形状を「カラマズーヘッドストック」としてエピフォンレスポールなどのレギュラー製品に採用されています。
認定書にある本人使用の写真ではトラスロッドカバーにロゴありませんが、一般流通しているモデルにはEのロゴがあります。
ナットは接着剤がとれてしまったのか取り外せてしまいました。
トレモトーン(Trem-o-tone™)
エピフォン独自のトレモロ機構。本体にネジ止めされています。
取り外してバーブリッジに交換している中古品も見たことがありますが穴跡が残ります。
バーブリッジもかっこいいですね。
ビンテージモデルでは、バーブリッジが取り付けられ、トレモロがついている場合はマエストロ・バイブローラが搭載されるようです。
このトレモトーンは通常はエピフォンクレストウッドに搭載されています。
ピックアップおよびキャビティ
ネック:Gibson USA Rhy P90 Soapbar 860-30504-L 06/02/15
ブリッジ:Gibson USA Rhy P90 DogEar 860-31508-L 05/26/15
リアピックアップの方が弦から遠いためか音が小さく聞こえます。
そのためかリアピックアップにドッグイヤー型のスペーサーを取り付けているカスタムもあるようです。
ポテンションメーター キャパシター ジャック
ポテンションメーター(ポット)はCTS A250KΩ(インチ規格)
キャパシター(コンデンサ)は Sprague Orange Drop 716P 0.033uF 400V
ジャックはスイッチクラフト
ニトロセルロースラッカー塗装:シルバーフォックスフィニッシュ
ギンギツネの毛並みのような色味を持つ塗装で写真写りによっては暗い緑に見えたり、黄土色を含む緑に見えたりします。
ポツポツと導管のくぼみが見え塗装の薄さを感じられます。
奥田民生氏はYouTubeチャンネルでこの色を「みどりきたない」と表現していました。
マホガニーの品質にもよるのかもしれませんが、ビンテージと比べると導管の色が少なく、色味がやや暗く見えます。
シリアルナンバー
シリアルはT+数字6桁で構成されています。(例:T000***)
T000200番台は見たことがありません。
製造数は300本限定ですが、シリアルではT000600番台中盤くらいまでを確認しております。
300番台後半でした。
重量
自分の個体は2,946gでした。
3kg台前半のものが多いようです。
重量の記載がある個体を数本ネットで見かけた中ではありますが、
最も軽いものは約2.9kg
最も重いものは約3.55kg
となりました。
トレモトーンがついているとはいえ、ナイロンストラップにナイロンの服だとヘッド落ちが心配になります。
直筆サイン入り認定書
認定書にはシリアルナンバーと奥田民生氏のサイン、そしてステージ上でコロネットを弾く奥田民生氏の写真。
しかしながら本モデルをこれ以外にステージ上で弾いている写真は僕は見たことがなく、あまり活躍していないかもしれません。
ハードケース
グレーの外装にブルーの内装。
購入品は残念ながら鍵が欠品でした。
サウンド
生音については、ネックが太くボディが薄い、軽量な個体というのが影響しているのか、生音がとても大きいです。
語彙力がなさすぎて説明できなく申し訳ありませんが、アンプで鳴らすと手持ちのレスポール系やストラト系と異なる気持ちのよい音が出ます。
トレモロのせいで鳴りがスポイルされているのではないかと思うと、ストップテールピースにしてみたらどんな音が鳴るのか気になるところです。(トレモロの穴が残るので簡単には変えられませんが)
メディアでの紹介
このモデルが詳しく紹介されている書籍はあまり見つかりませんでした。
別冊Lightning Vol.155 「憧れの銘品ギター図鑑」(2016/7/26発売)
P.94-P95 Epiphone 奥田民生 Coronet
このムック本では通常ギター紹介記事にはあまり掲載されないボディの厚みや全長など細かなデータが入っています。
発売当時の様子と評価
2015年7月末ごろに実売価格税込194,400円で発売。
最終的に2016年11月頃にはアウトレット品が税別92,500円で販売されていたようです。
当時のツイッターや海外のフォーラムの投稿を遡るとマイナーなモデルということもあり(さらに海外では「よく知らない人物のシグネチャーモデル」と指摘あり)、当時のエピフォンにしてはユニークかつ贅沢な仕様であることは歓迎されている反面、エピフォンのレギュラーモデルの価格帯からはかけ離れ高価格といった印象が強かったように見受けられます。
発売当時のエピフォンフォーラム。
私も通り過ぎ、値段の変化を見た。2,250ドルなら多くのギターが手に入るだろう。数年前のUSAギブソン・カスタムショップのウィルシャーのリイシュー。それはキラー・ギターで、Tamio Sigよりも(少なくとも紙の上では)良いものだった。
いずれにせよ…クールなギターだったが、IMOでは適切な価格ではなかった。
2015年9月28日 fiftywattmafia氏
https://www.epiphonetalk.com/threads/ltd-ed-tamio-okuda-elitist-coronet%E2%84%A2-custom-outfit-exclusive-for-japan.684/
2009 Gibson Custom Shop Epiphone ‘62 Wilshire Reissue
上記の投稿で指摘されているモデル。
奥田民生モデル登場よりも前にギブソンカスタムショップからエピフォンのウィルシャーがリイシューされていました。
海外フォーラムにて奥田民生コロネットを日本で購入した人物の投稿
とにかく、アンプラグドでは、前のCoronetほどうるさくないけど、それでもとても余裕がある。ギブソンのP90は本当に素晴らしい。ネックは、私が持っていたヴィンテージのエピフォン・ソリッドボディ(コロネット、ウィルシャー、オリンピック)よりも大きく、ややがっしりしている。
2015年11月30日 cosmitron67氏
https://www.offsetguitars.com/forums/viewtopic.php?t=93434&start=15
同氏はアフリカンマホガニーという点についてトーンに影響があることと、他のフォーラムで寺田楽器製と指摘。
YouTubeにてサウンドチェック動画を投稿しています。
ギターワールド誌ゴールドアワード受賞
海外のギター雑誌「ギターワールド」の2016年2月号にてゴールドアワードが授与されています。
レビュー記事がウェブで見ることができます。
EpiphoneのElitistビルダーは、このモデルでヴィンテージEpiphoneの本物のフィールと雰囲気を完全に再現しました。ネックは岩のように硬く、激しいリズムを刻んでもチューニングが崩れない。このようなソリッドボディのデザインは、最上部のフレットがネックとボディの間にあるため、かなりの偉業である。
ギブソンUSAのP-90ピックアップは、歯に衣着せぬアグレッシブなトーンで雄叫びを上げるが、ノイズのないパフォーマンスを提供することで、すべてのグリットとうなり声をその栄光のままに支配することができる。Coronetのファンキーな雰囲気は好きだが、より多彩なパフォーマンスを求めるなら、60年代のボロボロ・バージョンよりも、奥田民生Elitistの方がずっと良い選択だ。
Guitar World誌 2016年2月号 Chris Gill
https://www.guitarworld.com/magazine/review-epiphone-ltd-ed-tamio-okuda-elitist-coronet-guitar
奥田民生コロネットの仕様
Made In: Japan
Finish: Nitrocellulose Lacquer, Vintage
Body Material: 1-Piece African Mahogany
Neck Material: 1-Piece African Mahogany
Neck Shape: 1960’s SlimTaper™, D-Profile
Neck Joint: Glued-In
Truss Rod: Adjustable
Scale Length: 24.75″
Fingerboard Material: Indian Rosewood
Fingerboard Radius: 12″
Frets: 22, Jumbo
Neck Pickup: Gibson USA “Soapbar” P-90
Bridge Pickup: Gibson USA “Dogear” P-90
Controls: Switchcraft™ 3-Way Pickup Selector, Neck Volume, Neck Tone, Bridge Volume, Bridge Tone
Potentiometers: CTS™ 250K Audio, Orange Drop 473 Capacitors
Knobs: Vintage “Barrel” Reissue
Bridge: ABR Tune-o-matic
Tailpiece: Epiphone Trem-o-tone™ Reissue
Nut Width: 1.62″
Hardware: Nickel
Machine Heads: Gotoh, Vintage 3-In Line with Ivory Buttons
Strings: D’Addario™ EXL-110, 10-46
Colors: Silver Fox
Includes: Vintage Hard Shell Case with Gray Exterior, Certificate of Authenticity and Presentation Binder
Warranty: Epiphone Limited Lifetime
奥田民生氏による使用
奥田民生氏のYouTubeチャンネルで本モデルが登場している様子。
レスポールスタンダードやスペシャルといったイメージが強く、コロネットはあまり使用しているイメージがありません。
YouTube 奥田民生チャンネル「与える男②」~カンタンカンタビレ#22~ (2019/07/18)
「ボディが軽くて薄いっていうこともあって非常にチープなガレージな音」と評しています。
「イマイチ前に出ない音っつうかね、それがイイときはイイんですけど」
今後も加筆していきたいと思います。
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