今回紹介するMST-800は2008年頃に登場し、2010年頃まで販売されていたものとみられ、現在はMAVISブランドではギター本体の販売はされていないようです。
販売終了からしばらく経っているため中古品を購入しました。
あまり出回っているモデルではないので紹介したいと思います。
MAVIS
イシバシ楽器のプライベートブランド「MAVIS(メイビス)」は
MST-200などロングセラーな入門用としてお手頃なモデル、
MST-600というハイバリューモデルが人気で、いわゆる安ギターブランドのひとつとして馴染みがあったかと思いますが、今回紹介する「800シリーズ」はかつてあった最上位機種に位置するプレミアムモデルです。
以下のモデルがラインナップされていたようです。
- ストラトのMST-800
- テレキャスターのMTL-800B
- ジャズベースのMJB-880
- プレシジョンベースのMPB-880
MST-800の公式スペックからみていきましょう。
MST-800 スペック
公式掲載のスペックは以下のとおり
- Neck Muterial :メイプル
- Finger board : インディアンローズ
- Body Muterial : バスウッド
- Neck paint : グロスフィニッシュ
- Body paint : グロスフィニッシュ
- Machine head : GOTOH/SGM (※マグナムロック)
- Fret : ステンレス
- PU : アルニコNo.5
- Pot : CTS
- Jack : スイッチクラフト
- capasiter : オレンジドロップ
- Bridge : 6点止めBridge
- pick guard :ミント
スペックはざっくりとしたもので指板のアールやグリップシェイプなどは省略されております。
本体カラーラインナップは11種類と豊富です。
BLK/CAR/CS/DBL/FRD/MBL/NAT/NBM/TGM/WH/3TS
付属品
MAVIS最上位機種ということもあり、内部にクッションを備えた割としっかりとしたケースが付属します。
ショルダーベルトは高級感を持たせるためかPUレザー(合成皮革)生地が巻かれています。
幸い手にしたものは状態が良いですが、この素材は湿度が高い場所に保管をすると数年でボロボロになってしまうため注意が必要です。
また、3プライミントピックガードですが、購入時にもう1枚ピックガードが付属しカラーが選べたようです。(ホワイト・ブラック・パーロイド・べっこうの4種。また、交換用のドライバーも付属)
発売当初39,800円(2008年末。メーカー希望価格:オープン)で、その後2009年初頭にはすぐに32,000円。
当時のフェンダージャパンストラトキャスターST-STDは実売価格49,560円ほどと記録がありました。
価格帯としてはSquierクラシックバイブスよりは下でSquierのスタンダードやAffinityと重なる位置づけだったようです。
2010年頃には24,800円と値下げされていた経緯があります。
それでは本体の各部をみていきましょう。
ヘッド・ネック
MAVIS 800シリーズはネックにも特徴があります。
MST-800のネック。MAVIS特有のヘッドシェイプを不採用
MAVISブランドのヘッド形状ではなく、Fenderのスモールヘッドを模しています。トラスロッドの穴にはMST-600になかったブラウンエッグもあります。
MAVISブランドのオリジナルシェイプでMST-200などもこの形状。
ネックグリップはスペックに記載はありません。
同じMAVISのMST-600 Ver.3 はネックが薄すぎて強くにぎるとわずかにしなる感覚があり心配になりましたが、MST-800はネックにほどよい厚みと丸みがあり、グロスネックも相まってクラシカルに寄せた握り心地です。
個人的に薄すぎるのはしっかり握れずバレーコードで変な力が入って疲れてしまうので厚みがある方が嬉しいです。
指板はローズウッドでRはかなり平べったいです。
ゲージで測ってみたら430Rとあり、極端な平坦さです。
(17インチ=431mm)
ステンレスフレットが使われていることに関係があるのでしょうか。
ネックの感じはMTL-800Bも同じでした。
ヘッドロゴが厚みがあるクローム調のステッカーです。
購入時から既に浮いており気になってしまうので剥がしてしまいました。
ナットは牛骨っぽいですがスペックに記載がありません。接着剤がかなりはみ出ています。
ボディ
3トーンサンバーストなのですが、バウスッドということもあり木目がほとんどない薄顔です。
3プライミントピックガード、ネジ11本止め。
プラスチックパーツはアイボリーのビンテージタイプ。
60年代以降のストラトキャスターを模しています。
中古のため追加のピックガード、トレモロアームは欠品。
持ってまず最初に感じたのがボディに安いギターと比べわずかに厚みを感じ、実際に測ってみると45mmと、Squierよりも5mm厚みがあります。
ストラト系モデルはこの点の差は大きく、これによりフルサイズのトレモロブロックが搭載可能です。
ザグリはHSHでした。
まるごと空洞を開けたいわゆる「弁当箱」だとそれだけで安ギターの烙印を押されてしまうし、だからといってSSSだと融通がきかなく感じますよね。
ハムを載せようと思ったときにボディを削るのは気が引けるのでHSHは少しありがたく感じます。
重量
体重計にて重量計測3.4kg(弦含まず)
- ボディ(バスウッド):2.6kg(ネックプレートとビス含まず)
- ネック(メイプル):822g(ペグ含む)
個人的なメモ
K-garage KST-150 ストラト(バスウッド・厚み約43mm) :2.6kg
Squier JAGMASTER 2010年(アルダー・厚み約41mm): 3.4kg
使用されているパーツを個々に見ていきます。
使用パーツ
コストの多くはグレードの高いパーツに向けられています。
ペグにGOTOH SGM-MG (マグナムロック)
通常、安ギターでは亀ペグと呼ばれる少々貧弱なペグが使われていますが、買えば5,000円以上はする部品です。かなり思い切ったパーツチョイスです。
ロックペグは後々交換したいパーツですが割高ですので標準装備なのは嬉しいですが、欲をいえば同じマグナムロックのクルーソンタイプペグにしてほしかったところですが差別化をしていたとも思えます。
(手持ちに普段使っている弦がなくて6弦に46を使ったらペグポストに入りませんでした)
ステンレスフレット
そして、特筆すべきはステンレスフレット。大きさはミディアムジャンボとみられます。
高価なモデルに搭載されている印象です。
一般的にステンレスフレットはニッケルよりもトーンが高くなると言われますが素人耳の僕からしたら言われても解らない程度です。
同じMAVISのMST-600はフレットの削れやすいとのことで使い方に気を使うのに対し多少雑に扱っても安心感があります。
磁石を当ててみるとくっつくので400番台のステンレスと思われます。
400番台のステンレスは塩分により錆びる可能性もありますので使用後は汗を拭き取るといった手入れは必要でしょう。
ただ良いことばかりではなく、仕上げが荒くフレット表面がなめらかでないためチョーキングしたときにやや変な感触があり。
すり合わせをすればより快適になりそうですが、ステンレスの硬さから僕のような素人の加工ではハードルが高く、リペアショップでも通常のフレットよりも費用が高く設定されていることもあります。
フレット端は指板の痩せなのか若干フレットがはみ出て手にひっかかります。これは指板にオイルを塗布しても変化はありませんでした。
(テレキャスタータイプのMTL-800Bはフレットのはみ出しは気づきにくい程度に収まっていました)
少々仕上がりに粗さをを感じるもののフレットの浮きがなかったのはよかったです。
コンデンサ・ポット・ジャック・ピックアップ
電気パーツ類の半田づけに関しては安ギターの中では割ときれいな方だと感じました。
内部パーツ類にもこだわりがあり、グレードの高い部品が使用されています。
しかし、残念ながら800シリーズ共通でリコールも出ていますので注意が必要です。
(イシバシ楽器ホームページより)
一部の製品に他のモデルの部品が使用されていたようです。
外から確認できる箇所ではありませんが、幸いリコール対象の製品ではありませんでした。
オレンジドロップ (SBE 6PS-S50 503K600 0.05uF )
オレンジドロップはSBE 6PS-S50というもの。
リコール情報のページには
“* オレンジドロップ(コンデンサー)の数量が1個と2個のバージョンがありますが、 機能は変わりませんので、今回の件には当てはまりません。”
とあります。
ポット、オレンジドロップなどは購入すれば数百円程度から手に入るものですが、交換には半田付けが必要ですので初めから装備されているのは助かります。
CTS 250KΩ Aカーブ CTS-S250A ポット
CTS製のポットは初めて触りますが、スムースというよりはしっかりとした回し心地です。
スイッチクラフト製 ジャック
スイッチクラフトのジャックはガッチリとした刺し心地で安心感はありますが、頻繁に抜き差ししにくいです。
MST-800はバスウッドのボディのため、舟形ジャックプレートの固定ネジが抜けるのではないか心配になるため、ジャックプレートを抑えながら抜くようにしています。
5WAY セレクター
Ming Shi 5L-Pは安ギターに使用されている5WAYセレクターのようですが、クリック感がしっかりしています。特に不満がありません。
アルニコⅤ ピックアップ
スタガードポールピースを持つアルニコⅤピックアップ。
安ギターにありがちなセラミックピックアップに比べて柔らかい音に感じました。
残念ながらミドルにすると2弦の音の反応が悪かったため、交換を決意しました。
シンクロナイズドトレモロブリッジ
サドルはスチールプレスサドル。
スチールパーツの端はやや角ばっており手に触れる部分なので少々気になります。
安ギターではダイキャスト製ブロックタイプのサドルを見慣れているので新鮮に感じます。
弦間は一般的なアジア製安ギターと同じ10.5mm
弦間は10.5mmでアジア製エレキギターでは一般的なようです。
この弦間によってネジの位置も決まるため、ブリッジプレート・サドル・トレモロブロックなど取り付けできるパーツも限られてきます。
安ギター故の致し方ないところです。
フェンダーUSAの近年のモデルでは弦間10.5mmのものもあるようですが、ブリッジプレートが2点支持のため適合しません。
6点支持で弦間10.5mmというのは選択肢が少ないため、加工が必要ですがスタッドを取り付けて2点支持化したほうが選択肢が広がります。
トレモロブロック
シンクロナイズドトレモロは亜鉛ダイカスト製ブロックで安ギターでおなじみの厚みが薄く、薄いボディ厚に適合するため奥行きも少ないものです。
MST-800はせっかく厚みのあるボディを持ち合わせているのでトレモロブロックはカスタマイズしたくなる箇所です。
まとめ
木工、ナット、フレットの仕上がりなどはSquierに及びませんが、使用パーツで低価格ながらになんとか頑張ったという印象のモデルです。
しかし店頭で手にとって両者を比べたときにすぐに解る差はマグナムロック程度で価格の割に仕上げの粗さが目立ってしまったかもしれません。
今回、使用されているグレードの高いパーツのおかげで「あ~、こういう質感なのか」と知ることができました。
安ギターには購入後にカスタマイズをする楽しみがありますが、MST-800は細かな部品を先回りしてくれているので、残りの部分を変えていくといった使い方に向いているように思います。
気に入りさえすればスレンテスフレットのおかげで長く楽しむことができそうです。
いま交換したいと思っているのは以下の部品です。
ナット…(理想はオイル漬け牛骨)
ピックアップ…(音の変化がわかりやすいものへ)
ブリッジ…(一定水準のものへ)
トレモロブロック…(スチールのフルサイズのものへ)
ネックやボディそのものはそこまで良いとは言えませんので、どこまで費用を抑えながらカスタムしていくかを考えるのも楽しいかもしれませんね。
また、フェンダーやギブソンに触れたことがありませんが、MST-800を触ることによりSquierやEpiphoneといったエントリーモデルがローコストな部品を使いながらも全体的にバランスよく作られていると感じた次第です。
当ブログでは他にもMAVIS 800シリーズを紹介していますのでよかったらご覧ください。
安ギターのカスタムテレキャスタータイプ MAVIS MTL-800B
https://www.fps-ninja.com/guitar/mavis-mtl-800b/
プレミアムな安ベース MAVIS MJB-880 ジャズベースタイプ
https://fps-ninja.com/guitar/mavismjb880/
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